お気に入りのスニーカーはできるだけ長い期間、綺麗な状態を保ちたいもの。
しかし、世に出ているスニーカーのほとんどが避けて通れない劣化として加水分解があります。
- ソールを触るとボロボロと崩れる
- ソールがベロっと剥がれてしまった
- 履き口がベタベタする
上記のような症状がスニーカーの劣化として有名な加水分解の症状です。
どれも「履き物」の役割を持つスニーカーにとっては、かなり深刻な劣化ですね。
では、なぜそのような劣化が起きてしまうのでしょうか。
本記事では、スニーカーの加水分解の仕組みとその原因について解説していきます。
また記事の中で、加水分解のしないスニーカーについても触れていきますので、ぜひ読んでみてください。
加水分解してしまったスニーカーの実物紹介
スニーカーマニアの方であれば、すでに手持ちのスニーカーで加水分解を経験しているかもしれません。
しかし、最近スニーカーに興味を持ち始めた方にとっては、文字で特徴を言われてもイマイチピンときませんよね。
ということでまずは、実際に加水分解が起きてしまっているスニーカーの状態を2枚お見せしようと思います。
まずは加水分解の代表格、NIKE / Air Max 95
なんとかスニーカーとしてのシルエットは保てていますが、ミッドソールの加水分解がひどく、履くことは不可能なほどボロボロです。
お次も加水分解しやすいことで有名な、NIKE / AIR JORDAN 4
こちらに至っては加水分解によりミッドソールが完全に崩れ去り、スニーカーとしての原型がないほどの状態です。
今回例として挙げた2種類のスニーカーは、どちらも加水分解が完全に進行しきっている状態のため、言うなれば加水分解したスニーカーの最終形態。
しかし、少なからず加水分解の症状が出始めると、写真のような状態までになってしまうのはもはや時間の問題です。
では実物を見ていただいた上で、なぜこのようなことが起きてしまうのか、加水分解の仕組みや原因についてお話ししていきます。
スニーカー劣化の定番【加水分解】の仕組みと原因
残念ながら加水分解は防ぐことのできない劣化です。
もっと言うのであれば、皆さんの手元にスニーカーが届くもっと前、製造時点から加水分解は始まっています。
「そんな前から?」と思ってしまいますが、その答えは加水分解の仕組みにあります。
加水分解の仕組み
スニーカーのソールには軽量化やクッション性のために、発泡ポリウレタンというスポンジのような素材が多く使われています。
肉眼では見えませんが、スポンジ形状のため小さな穴がたくさん空いているということです。
その小さな穴に水分が入り込み、ポリウレタンを形成している分子同士の結合を分解してしまう現象、これを加水分解と言います。
つまり元々はくっついていた物が、間に入った異物によって引き剥がされて形が崩れる。
上記をスニーカーに当てはめてみると「ソールを形成しているポリウレタンの結合が分解される=ソールがボロボロと崩れてしまう」といったことになります。
ちなみに加水分解はソールに限った話ではなく、靴の素材の接着に使用される接着剤にも影響を与えることがあり、ベタつきや素材同士の剥がれなどにも繋がります。
加水分解の原因
分子同士の結合を水分が分解する
つまり、加水分解の原因は水分です。
スニーカーに影響する水分は、
- 空気中の湿気
- 人間の汗
- 雨などで直接濡れる
上記のように、少し考えただけでもかなり身近なところに原因が潜んでいます。
先ほど「製造時点から加水分解は始まっている」と言ったのも、スニーカーとしてポリウレタン素材が形成された時点から、空気中の湿気にさらされているためです。
スニーカーの加水分解については、下記リンクのYouTubeでも詳しく解説していますので、動画で見たい方はぜひチェックしてみてください。
加水分解しやすいスニーカー、しないスニーカーの紹介
現在世に出ているスニーカーは加水分解してしまうモデルがほとんどです。
しかし、中にはスニーカーに使われている素材によって、加水分解しないモデルもあります。
この項目では、加水分解しやすい・しづらいスニーカーの代表的なものをそれぞれご紹介します。
加水分解しやすいスニーカー
- NIKE / AIR MAX
- NIKE / AIR JORDAN 2以降のモデル
- NIKE / AIR MORE UPTEMPO
どれもソールにポリウレタンが使われており、加水分解による劣化は避けて通れないスニーカーです。
冒頭の写真でもお見せしたようにAIR MAX 95の加水分解はかなり有名のため、知っている方も多いかもしれません。
今回は加水分解しやすいモデルとしてNIKEの3つを紹介しましたが、ニューバランスやアディダス、リーボックのような他社メーカーでももちろん加水分解の対象になるモデルは多くあります。
いわゆる「ハイテクスニーカー」と呼ばれるものはソールにポリウレタンが使用されることが多く、加水分解しやすいモデルになります。
加水分解しないスニーカー
3つともゴムソールのため、加水分解によるソールの劣化が無いスニーカー。
特にCT70、OLD SKOOLはキャンバス生地+ゴムソールという組み合わせがほとんどのため、耐久性はピカイチです。
ただしゴムソールはゴムの性質上、経年で徐々に硬化してクッション性が悪くなっていく可能性もあります。
一概に全てのゴムソールが確実に硬化するとは言い切れませんが、そういった可能性があることは頭の片隅に入れておきましょう。
スニーカーの加水分解を防ぐ対策3選
冒頭でもお伝えした通り加水分解は防ぐことのできない劣化です。
しかし適切な対策をしておくことで、加水分解の進行をかなり遅らせることができます。
その対策とは、
- 湿気対策
- 定期的に履く
- 正しい保管方法と保管場所の選定
上記の3つが、加水分解を防ぐための方法です。
それぞれ詳しく解説していきます。
湿気対策
一番確実、そして手間もかからないのがシリカゲル(乾燥剤)をスニーカーに入れることです。
除湿機を使用するのももちろんOK。
ただ、導入費や日々の電気代などのコストを考えると除湿機での湿度管理は中々敷居が高いのが事実。
それに比べて乾燥剤はコスパも良い+中に入れるだけといった、スニーカーの湿気対策にはぴったりなアイテムです。
雨の日に履いた時はもちろん、足から出る汗でもスニーカー内には湿気が溜まるため、中にシリカゲルのような乾燥剤を入れてしっかりと除湿しましょう。
特に日本は高温多湿な環境のため、部屋内にて保管する際もシリカゲルは必須アイテムです。
定期的に履く
諸説ありますが、定期的に履くことが1番の加水分解対策と言われることも。
スニーカーを履くことによりソールに適度な圧力がかかり、ポリウレタンの隙間に入り込んだ水分を押し出すことができます。
レアなスニーカーは傷が付くことを気にして履くことをためらいがちですよね。
しかし、定期的に履くことがかえって寿命を延ばすことにも繋がりますので、未着用のままコレクションしたいモデルでない限りは、意識的に履くことがおすすめです。
正しい保管方法と保管場所の選定
-
定期的に履くモデル
→乾燥剤 or 乾燥剤+スニーカーボックス - 履かずにコレクション
→乾燥剤+ラッピングフィルム+スニーカーボックス
上記の組み合わせのように、履く頻度によって保管方法を変えることがおすすめです。
「湿気対策を全くせず湿度の高い場所に置いておく」のような、誤った方法で保管することはスニーカーの寿命を確実に縮めてしまいます。
特に履かずにコレクションするようなレアモデルであれば、価値を下げないためにも、より確実な湿気対策をしっかりと行いましょう。
ちなみにKicksWrapのラッピングフィルムは、空気抜き用の穴がつま先1箇所のみ。
つまり、限りなく空気中の湿気からスニーカーを守ることができます。
PremiumモデルにはUVカット機能も付いているため、スニーカー保存にはぴったりのアイテムです。
スニーカーの加水分解についてよくある質問
スニーカーの加水分解についてよく聞かれることの多い、
- 修理の可否
- 何年ぐらいで加水分解してしまうのか
上記の2点についても触れておこうと思います。
スニーカーが加水分解した場合修理は可能?
A:可でもあり不可でもある
加水分解で壊れてしまったスニーカー単体での修理は不可能です。
残念ながら、劣化の進行したポリウレタンを加水分解前の状態に戻す方法はありません。
しかし「ソールスワップ」と言って、加水分解でソールが壊れてしまったスニーカーに別のソールを移植する方法があります。
ただしソールスワップにおいても、加水分解前と全く同じ状態に戻すのはハードルが高いのも事実です。
理由としては、下記の2つ。
- 全く同じモデルで同じサイズのソールを用意する必要がある
- 交換素材として使うソールに劣化が無いことが条件
このように加水分解前の状態にするには、同じスニーカーをもう1つ用意する必要があり、金銭的負担が大きくなってしまいます。
更には、交換素材として使うソールは加水分解していないことが条件のため、発売より年数の経っているモデルでは見つけるのも難しいかもしれません。
これらを考慮すると加水分解したスニーカーの修理は、可能ではあるがほぼ不可能と言えます。
スニーカーは何年くらいで加水分解する?
A:よく言われるのは10年程度。ただし...
10年もつと言われるのは空気がカラッと乾燥したアメリカでの話。
多湿な日本では5年〜7年が目安と言われています。
もちろん保管方法や履いている頻度、モデルによっても違うため、はっきりと〇〇年とは言い切れません。
5年も持たない事もあれば、何もせずとも8年持っているということも十分あります。
1つ言えることとしては、日本の気候はスニーカーにとって相性はあまり良くないため、アメリカなどに比べるとスニーカーの寿命は短いということは意識しておきましょう。
まとめ
希少なプレミアスニーカーはもちろん、現在世に出ているスニーカーには、多くのモデルでポリウレタンソールが使われています。
加水分解は製造時点から始まっているため完全に防ぐことは不可能な劣化。
しかし適切な保存方法を施しておくことで、未対策よりも寿命を伸ばせることは確実です。
乾燥剤を中に入れておくだけでもかなり違いますので、自分のスタイルに合った加水分解対策をしておくことがおすすめです。